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銀行が住宅ローンに力を入れる理由
銀行の住宅ローン金利をご存じでしょうか?
当初の貸出金利は金利優遇によって1%前半のところが多いですが、銀行の調達コストは1.2%程です。貸出時点を見ると、調達金利よりも運用金利の方が低く、「逆ザヤ=赤字」の状態になっています。
なぜ銀行は金利を優遇してまで、住宅ローンを積極的に推進しているのでしょうか。その答えは「お金が余っているからです」。
●住宅ローンのセーフティー度は10倍
銀行が住宅ローンの競争を繰り広げる背景に「住宅ローンの貸し倒れ損失が少ない。」ことが挙げられます。「デフォルト率」ってご存じでしょうか?
いわゆる“貸し倒れ率”のことです。地域や時期によって違いますが、一般的に法人向け融資のデフォルト率は2〜3%程です。
それに対して住宅ローンのデフォルト率は0.2〜0.3%程です。企業向け融資に比べて、個人向けの住宅ローンは貸し倒れになる確率が10分の1なのです。銀行にとって住宅ローンは、企業向け融資よりもとてもセーフティーな資産ということになります。
また銀行がローン実行時に顧客から頂戴する手数料に「ローン保証料」というものがありますが、それは「融資額の0.2%」程です。つまり、デフォルトがローン保証料の範囲内でしか起きていないので、銀行にとってみればほとんど貸し倒れ損失が発生していないことになります(今後のことは分かりませんが)。
住宅ローンは「自宅」という家族にとって大切なものへのコストです。旦那さんの給料が減少すれば、奥さんがパートにでたり……という家族も多いでしょう。また住宅ローンには返済が難しくなったときでも救済措置が有るので、そう簡単にはローン破産に陥りません。
●メイン口座が増える
ただし、いくらセーフティーな資産といえども、銀行自らが「赤字」を増やしていくことはありません。住宅ローンを積極的に推進する理由に「長い目でみると総合的にメリットが有る」からです。
例えばA銀行で住宅ローンを組むと、多数の人はA銀行がメイン口座になります。給与 振り込みや公共料金、クレジットカードの引き落とし口座などを利用してくれます。また子どもの学費の支払い口座になれば、大学入学時には教育ローンも取れるかもしれません。退職金を受け取ればそのまま運用してもらえるかもしれないし、年金受取口座につながるかもしれません。
このように家計のお金が集まる仕組みを作れば、銀行にとっては調達コストを引き下げることになります。住宅ローンでもうけることができなくても、収益全体に貢献すれば良いのです。
●BIS規制上リスクアセットが良い
銀行は企業にお金を貸すより、住宅ローンを推進した方が自己資本比率が良くなることをご存じでしょうか。「自己資本比率」という言葉を聞いたことがない人もいるかもしれません。銀行には「自己資本比率規制」(BIS規制)という世界中の銀行が共通で守らなければいけないルールがあります。
BIS規制とは、銀行の財務の健全性を保つために国際金融当局が一律で定めている規制のことです。融資などのリスク資産を分母に、普通株や内部留保などの自己資本を分子として自己資本比率を計算して、一定割合(国際銀行は8%、国内銀行は4%)を上回るように義務付けているのです。
自己資本比率の計算式は、「自己資本÷融資総額」ですので、自己資本比率を上げたいと思えば、分子を大きくする(=自己資本を増やす)か、分母を小さくする(=融資総額を減らす)しかありません。というわけで、自己資本比率規制が厳しくなると銀行は分母を小さくするために融資額を抑えるので「貸し渋り」や「貸し剥がし」が行われたりするわけです。
住宅ローン控除の申請は、当事務所においても対応しています。