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IFRS適用――欧州、米国、インドから日本は何を学ぶ?

 "あらた監査法人パートナーのカースティン・ガンスオーガ氏"PwC Japan は3月2日、IFRS(国際財務 報告基準、国際会計 基準)についての説明会を開催した。欧州で企業のIFRS適用を支援した、あらた監査法人パートナーのカースティン・ガンスオーガ氏は、IFRS適用時の欧州企業が金融商品、年金、リース、連結、そしてIFRS導入玄人ジェクトにコストを費やしたと説明した。

 ガンスオーガ氏によると欧州企業のIFRS適用初年度のコストは年間収益の0.05〜0.31%。5600万円から3億8000万円掛かっていたという。これらのコストは一時的な負担だが、企業はその後もこのコストの20%をIFRS対応コストとして継続的に費やしているという。

 このような負担を掛けながらも欧州企業がIFRSを適用してきたのは2005年に欧州域内の上場企業にIFRSが強制適用されたことが理由。加えて企業がIFRSにメリットを感じている面もあるとガンスオーガ氏は指摘した。「私の経験上、欧州ではIFRSの適用で企業が恩恵を受けている」というのだ。

 財務諸表作成者側のメリットとしてガンスオーガ氏は「財務報告の質の向上」を挙げた。ある調査によると60%の財務諸表作成者がIFRS適用のメリットとして、財務報告の質の向上を挙げているという。また、外部向け報告と内部向け報告のデータの整合性を取れることや、システム 、業務プロセスの標準化が進んだことなどもメリットとして指摘出来るという。

●インド、強制適用を1年延期か
 説明会では、あらた監査法人IFRSテクニカルリーダー木内仁志氏がIFRSの最新動向について説明した。IASB(国際会計基準審議会)はMoU項目に関連する会計基準の改訂を進めており、2011年6月末までに予定している項目を終わらせる予定。そのため3月以降、会計基準のリリースラッシュ になるようだ。3月には最終基準として「連結」(連結の範囲)、「ジョイント ・ベンチャー 」「連結」(非連結企業に関する開示)、「公正価値測定」「包括利潤」「退職後給付」が公開される見込み。4〜6月には「金融商品」(全体)、「リース」「収益認識」「保険契約」の最終基準化が控えている。

 この中で特に注目されるのは収益認識、リース、そして米国との考えに隔たりが大きい 金融商品だ。収益認識は公開草案に対して約980のコメントが寄せられた。会計基準はコメントを受けて修正されていて、木内氏は「より実務的になってきている」と指摘した。リースについても公開草案には約670のコメントがあった。木内氏は「公開草案からとても変わった基準が出てくるだろう」と話した。

 日本のIFRS強制適用にも大きな影響を与えると予想される米国のIFRS適用についても動きがあった。米国はIFRSを自国企業に対して適用するかどうかの判断を2011年中に行う予定。強制適用の場合、準備期間に4年間おくとしていて、最短でも開始は2015年となる。2010年12月にはSEC(米国証券取引委員会)のスタッフが「コンドースメント・アプローチ」を提案した。コンドースメントはコンバージェンスとエンドースメントを組み合わせた造語で、木内氏によると「新規IFRSを米国で利用出来るようエンドースし、その他の米国会計基準をIFRSにコンバージェンスしていく。さらにフルIFRSの適用を何らかの形で認める」という長期的なアプローチだ。

 日本の強制適用判断は2月24日に再開された企業会計審議会総会で議論される可能性がある。その判断の重要な要素が他国の状況。2005年にIFRSを強制適用したオーストラリア や2011年に強制適用する韓国 、同じく2011年の強制適用を予定するインドの事例などが取り上げられるだろう。 だが、そのインドの状況が不透明になってきた。インドはIFRSをカーブアウト(限定部分不採用)した会計基準を2011年4月に強制適用する予定だが、その基準が完成したのが2011年2月末。IFRSを適用する企業にとってはわずか1カ月しか準備期間がない。しかもその基準の質を問う声もあり、インドでは強制適用の時期を2012年4月以降に延期することが議論されているという。


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