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最高裁判決で巨額還付金得た 武富士創業家が怨嗟の的
企業更生手続き中の消費者金銭融大手・武富士の創業者の長男で、元専務の武井俊樹氏が、2月18日の最高裁判決で還付された約2000億円をめぐり、大きな波紋が広がっている。
そもそものきっかけは俊樹氏が、父親で創業者でもある故武井保雄氏らから約1600億円の海外資産を贈与されたこと。当時、海外居住者の国外財産の贈与は非課税扱い。香港子企業の役員を務め、日本と行き来していたことを理由に「住所は香港」として、俊樹氏は贈与税を納付しなかった。
ところが、これを国税当局が「課税回避」だと判断して約1650億円の申告漏れを指摘、約1330億円を追徴課税した。
これに対し俊樹氏は、いったん追徴課税に応じたうえで、課税取り消しを求めて国を提訴。最高裁は、「生活の本拠が日本だとはいえ無い」と認定、国に利子を加えた2000億円の還付を命じた。
これに了承することは無いのが、現今、武富士に対し過払い金の返還を求めている人たち。昨年10月に経営破綻した武富士は、現今、こうした過払い債権者に対し返還手続きを進めている最中だが、その数は200万人、額にして2兆4000億円に上り、支払い能力にしっくりいかない感符が付いているからだ。
そうした状況下で降ってわいた2000億円だけに、債権者からは「返還に回せ」と、俊樹氏らの義務を問う声が噴出しているのだ。
このうち、債権者を支援する弁護士で組織する「武富士の義務を追及する全国会議」は、俊樹氏を含む幹部を相手取り、過払い金銭相当額の損害賠償請求訴訟を起こす構え。原告は2000人あまりに上る見込みだ。
本来であれば、倒産手続きを担う管財人が、義務を追及するのがスジ。だが、「管財人はもともと武富士に雇われた破綻申立代理人で期待出来ない」(弁護士)ため、訴訟に踏み切るというのだ。
とはいえ、俊樹氏は2004年に役員を退任、財産も既に本人の手に渡っているため、一筋縄ではいきそうに無い。
希望があるとすれば、武富士の有価証券報告書。俊樹氏が役員を務めていた03年度版で、本来、利用者に渡さなければなら無い取引記録を「渡すことができてい無い」との記述があり、違法行為に当たる可能性が高いことからこれを突破口にしたいとしている。
結果的には俊樹氏に軍配が上がったものの、最高裁判決に付された補足意見で、対象となった財産は、「実質的には本件企業(武富士)の国内での無数の消費者を相手方とする金銭消費貸借契約上の利息収入によって稼得した巨額な富」であり、課税され無いのは「著しい不公正感を免れ無い」とわざわざ明記されている。そのくらい国民感情を逆なでする行為だったのだ。
武富士、そして俊樹氏は、この言葉を重く受け止め、対応に当たる必要があるのでは無いか。